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日本の原風景シリーズ「NHK 映像詩 里山II・命めぐる水辺」滋賀県高島市針江地区
2年ほど前だったか、夜中にふとテレビをつけたときに、こんこんと湧き出る水とその水辺を取り巻く人たちの生活の、なんともいえない情緒的な映像が流れていた。突然目の前に現れた風景は最初、現在の日本の風景だとはとても思えなかった。日本史をやっていれば避けては通れない近江の国なので、琵琶湖の周辺にはきっととても優れた文化があるのだろうとは薄々思っていたけれども、その番組が終わるまでの60分間は画面の中に現れる、ただただポエティックな世界に引きずり込まれていた。

うだるような暑さの京都を脱出。湖西線でずうっと琵琶湖を眺めながら一時間ほどで到着。



この井戸のようなものは「かばた」という。この地域から湧き出てくる水を貯めておく上下水設備で、各家庭が個人の所有物として敷地内にほぼ一つずつ持っている。



かばたの水は平均して年間14度前後の温度を保っていて、夏は水道水より冷たく、冬は水道水より温かい。わき水が直接流れ込む上水部分である「壺池」には、季節折々の野菜を水に浮かべて冷やしたり、そこで顔を洗ったり、食べた後の食べ物を洗って、その隣に流れている下水部分である「端池」に流す。



写真左。端池では鯉やナマズがペットとして飼われていて、ごはんをたべたあとのナベや食器を入れておくと雑食性の彼らはそれをひとつのこらず全部食べてしまう。(当然、生ゴミ入れではないので、残り物をそのまま流すことはない)カレーのような油を含んだものでも食べるが、野菜の切れ端のような人間が食べないものは彼らも食べない。

写真右。各家々の下水部分の端池はすべて繋がっていて、上流の家で洗ったものが当然下流の家にも流れてくる。基本的には鯉が食べてしまうのでクズは流れてこないけれども、もしも上流でなにか毒性のあるものを流してしまったら、下流の鯉は全滅してしまったりするわけで、そのようなことが起こらないような地域としての信頼関係をベースとしてこの水のシステムは成り立っている。



上水部分である壺池の種類もさまざま。陶器でできた立派なものから、臨時でバケツをつかっているところもある。



お寺のつくばいもかばたで。100年前より続く地元のとうふやさんはもちろんかばたの水でとうふを冷やしている。



ヴェネチアのような都市としての派手派手しさはまったく無いけれども、この地域の人たちは有史以前からものすごく絶妙な水との距離感覚のある生活をしてきたまま、あまり多くの人にも知らないまま、遂に21世紀までそれは保存されつづけた。かつては日本各地に井戸やわき水をつかった文化があったのかもしれないけれど、そのほとんどが現存しない。19世紀から20世紀にかけての急激な変化に耐えることができなかったからだ。ここが現在まで残った理由は、ポンプをつかわずともほおっておいてもどんどん出てくるわき水の水量にある。



ボランティアガイドさんによると、そのとめどもなく湧き出てくる水を見て、大阪からやってきたおばさんは「私たちはお金を払って水を飲んでいるんや、もったいないから水をとめて」と本気で言ったというけれども、とめるにもとめようがなく湧き出た水は各家庭の端池から共同水路へ、そして子供達がボードで遊ぶ幅2メートル程度の針江大川に流れていき、琵琶湖にそそぎ、蒸発して雨や雪となって、雪解け水が長い時間をかけて濾過されてまた湧き水となってわいて出てくる。そんな地理的条件が揃っているから残ったのだし、見て回ったとしてもまたそれをそう簡単にはなにかに応用することもできそうにない。

針江には、京都駅からJR湖西線で約一時間ほどで来ることができる。ただ、この針江という地区は、元々住宅地である上、テレビで放映された後は、外から来る人が絶えず、地域にまったく知らない人がうろついていることが増えてしまったため、急遽地元でボランティアガイドチームが結成された。かばたのある風景を見て周りたいときはボランティアガイドへの連絡が必須である。まずはこちらにお電話を。090-3168-8400(ボランティアガイドチーム代表)



針江生水の郷委員(ボランティアガイドチーム)
http://www.geocities.jp/syouzu2007/

NHK 映像詩 里山II・命めぐる水辺
http://www.nhk-ep.com/view/10926.html

雪景色のかばた
http://www.geocities.jp/ike7zaki/newpage530.html
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