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原点(創造性を最大限発揮できる環境作りの、現代日本における原点)
今日の記事は、大変理学部系のお話であるのだけれど、なるべく幅広く、解りやすくお伝えすることを努力しようと思う。しかし、どうしても情報密度が濃いので、固有名詞等はなるべくハイパーリンクするので、リンク先を参照するべし。

ソニー・コンピューター・サイエンス研究所(Sony Computer Science Laboratories, Inc.|以下SonyCSL|Wikipedia)という研究所が東京・五反田にある。この研究所では、主にソニーの製品開発には関係なく、情報工学系の研究開発を行っているところなのだが、現在の日本国内の主な携帯電話ほぼ全てに実装されている予測文字変換システム「POBox」や、製品レベルではロボットの「AIBO」などがあり、脳科学者・茂木健一郎は元々(現在でも)この研究所の所属であったことは大変有名であると思う。

企業の研究所というとどこか秘密主義で謎のベールに包まれているところがあるが、ここは違った。SonyCSLには2003年、2004年頃の研究発表会にちょこちょこ通っていたのだが、そこで研究されている研究内容は当時メディアアートやコンピュータに関連する表現を追求していた立場としては、非常に興味深い世界だった。その場の空気感は大変創造性にあふれ、アメリカのデザイン・コンサルティングファームのIDEOや、アップル・マッキントッシュの原点となったテクノロジーを研究していたゼロックスのパロアルト研究所を彷彿とさせる刺激的な空気が漂っていた。最近になってわかったのだが、それもそのはず、1988年に設立されたSonyCSLの構想時に標榜していた研究所がパロアルト研究所であると、SonyCSLの所長である所真理雄が自著に記している。

彼の本を読んでみると、そのSonyCSLの原点は、どうやら慶應義塾大学理工学部にあるらしい。

慶應義塾大学工学部相磯研究室。相磯秀夫教授による、1988年まで存在したこの研究室は日本の情報工学における大変な人材を輩出をしている。1969年に上記の所真理雄が。1973年に「ユビキタス・コンピューティング」の坂村健が。1979年に「日本のインターネットの父」と言われる村井純が。1982年には「ウェブ進化論」の梅田望夫がそれぞれ在籍していた。(出展:onimaLab)名簿は1988年で終わっている。

なんと、その後、相磯秀夫は慶應義塾大学の改革に参加し、そして1990年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(以下SFC)の初代環境情報学部長になったのだという。このあたりのいきさつに関してはキャリナビに詳しく書いてある。今でこそ大変な人材を輩出しているSFCは、やはりそれを作り出す人材を輩出する梁山泊があり、リーダーが居たのだ。SFCとSonyCSLのルーツが同じであることも、相磯秀夫という人物についてもまったく知らなかった。その両者に流れる言語化しようのないオープンで、かつ自由な創造的環境を超える環境は、日本ではちょっと見たことがない。相磯研、どんなところだったのだろうか。しかし書いて字の如く、成る程なわけだ。

相磯秀夫、彼が人生中盤までのテーマだったはずの情報工学を捨て去って、大学改革に乗り出したとインタビュー記事には書いてあるが、情報工学分野から組織改革や教育改革者が現れたことが、改めて興味深い。
Q.SFCが作られたのが、1990年ですよね。

A.そうです。実際にはその3年半前からディスカッションを始めています。ものすごく密度の濃いディスカッションでした。1986年の10月に塾長から、各学部から3名ずつ出て、その他の関係者をいれて22名か23名で、二つの新しい学部を作るので、どういう学部を作ったらよいか検討して欲しいと言われました。みんな張り切っているから最初は勝手なことを言うわけです。

中略

7・8人のワーキンググループができて、土曜・日曜・祭日返上でホテルに泊り込んで夜遅くまで喧々諤々ものすごい議論を繰り返しました。1987年の春に一応、学部の名前のようなものも含めた第一次案を作って塾長に示しました。3年半かけたディスカッションは非常に大変だったけれども、これが今、実っているんですね。きちんとディスカッションしないといいものは作れないと痛感しています。

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天才・異才が飛び出すソニーの不思議な研究所 所真理雄著 日系BP出版
http://www.amazon.co.jp/天才・異才が飛び出すソニーの不思議な研究所-所-眞理雄/dp/4822247511

ソニーコンピュータサイエンス研究所を一般公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0613/sony.htm

ゼロックス・パロアルト研究所からアイデアを盗み出してマッキントッシュを作ったスティーブ・ジョブスの伝説
http://mactechlab.sakura.ne.jp/from-mactech-with-love/2253.html

日本のインターネットの父・村井純
http://tamachan.jugem.jp/?eid=399

相磯秀夫「ここ15年くらい私は大学改革屋になってしまいました」
http://www.carinavi.org/ja/career/156/article.jsp?page=4
| 情報デザイン・メディアデザイン | 16:03 | comments(2) | - |
相磯研の文化は村井研もかなり受け継いでいるようで、例えば「いかなるミーティングも女の子とのデートのためだったら休んで良い(その代わり報告書提出 or プレゼン義務あり)」などがあります。笑
| scotch | 2009/07/13 5:38 PM |
なるほどね。村井研にはあまり近づいたことはないので、SFCではほんの少し残っている文化遺伝子を垣間見たくらいしか体験できていないのだけれどね、ずっとなにかあるぞ〜なにかあるぞ〜っていう、別方向で攻めていた点と点が遂にぶつかった瞬間だったのですよ。
| tamachang | 2009/07/13 6:24 PM |