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本屋のイノベーション 松丸本舗
丸の内オアゾの中にある丸善の四階で、密かに本屋のイノベーションが起きていた。「松丸本舗」にびっくり!なにがどう驚くかっていうと、本が全てカテゴリーではなく「文脈」で配置されてるってところ。それもただの文脈ではない。人類の知の体系に基づいた、松岡正剛の脳みその中をそのまま形にしたような文脈で配置されているのだ。



自らのことをセイゴオと称する、この一見ファンキーなおじさんが松岡正剛という。僕のブログのスタンスとしては、難しくてよくわからないことを、なるべく伝わるように説明したいと思っているけれど、この人ほど説明が難解な人もそうそういないと思う。

編集工学研究所所長、東京大学客員教授等々の肩書きをお持ちの方だが、要するに現代の文人の一人だと勝手に解釈している。wikipediaによると、「高校から大学にかけて、革命的マルクス主義派に属し、学生紛争の論客として鳴らす」とある。なるほどそういう出自の方だったのか、と妙に納得する。



2000年頃から「松岡正剛の千夜千冊」なる書評サイトをやっていた。googleで本のタイトルを検索すると、かなりの確立で現れるこの松岡正剛さんの書評サイトは、いつしか千冊を超え、今日現在では「松岡正剛の千夜千冊 連環篇」として、1345夜を数えるまでになっている。



この人は、頭の中に壮大な年表というか世界というか、宇宙観を持っているんだろうと思われる。NTT出版から出版された「情報の歴史」を読んでいると、ただ、何千年もの年表を眺めていることにはあまり意味はなく、シェークスピアが関ヶ原の戦いと同時代であるとか、ピューリタン革命が日本の近代化に直結しているといったように、歴史を縦割りで見るのではなく、文脈を繋いでこその学びであり、アカデミズムの真骨頂なのではないのか、と思ったものである。そこまで文脈を繋いで世界を見れるということについてはもはや芸術的な領域に達しているのではなかろうか。



そんな松岡正剛さんが丸善とコラボレーションしてできたのが、松丸本舗らしい。本棚の棚板の幅はすべて40ミリ!そんな厚さの棚板がある本屋はほかにないという。渦巻き状に配置されている本棚は、平積みはまったく無いけれどいたるところに積み置きされていて、まるで松岡正剛さんの書斎の書棚のような状態なのである。もう10年近く昔、当時代官山にあった編集工学研究所の本棚を拝見したことがあるが、まるでファイナルファンタジーに出てくるような、古代図書館さながらの迷宮のような書棚であった。後にも先にもこれだけの地層を感じることができた本棚は、松岡正剛の本棚と竹村健一の本棚くらいな気がする。



ちなみにこの松丸本舗の書棚、メンテナンスはそうとうめんどくさいらしい。
準備期間に1年以上をかけ、30万冊近いストック本から、丸善と松岡さん主宰の編集工学研究所のスタッフ計8人が日々、本棚のメンテナンスに努める。松岡さんも毎週、閉店後に本棚をチェック。その痕跡が本棚の落書きや、手書きの推薦本掲示コーナーに現れている。

顔見える本屋、売り上げ2倍 東京・丸善本店の「松丸本舗」 - ITmedia News
ただ、ここまで濃密な知の体系に沿ったものでなくとも、いくつか文脈形情報配置がされた書店は既にあったのである。まずはみなさんご存じ、東京・青山の青山ブックセンターだろう。2004年の7月に一時は閉店騒ぎもあったものの、現在は青山本店のほかに六本木と丸ビルにある。

それから京都では大変有名な、左京区の京都造形芸術大学のちょっと手前にあるガケ書房は、文脈形書店の走りなのかもしれない。そのちょっと北2kmほどの場所にある恵文社一乗寺店も入り込むとなかなか出てこれないタイプの深い森のような本屋だと思う。京都にお越しの際は、北白川でこの二つの本屋をはしごするのは大変オススメ。



しかし、本屋に限らず、情報がただカテゴリーのみで分類されていることは、なんてつまらないんだろうと思う。こないだの孫さんの話にも通ずるけれど、人は感動があって、興味をもち、初めて主体的になれるものだろう。そこにたどり着く情報の整理のための最適解が、文脈や物語なんだろうと、少なくとも松岡正剛って人がなに考えてるのかがちょっとだけわかったような気がする。

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白川静 漢字の世界観 松岡正剛(平凡社新書)
http://tamachan.jugem.jp/?eid=533

アラン・チャンは中国に眠るイメージを自在に変換するデザイナーである
http://tamachan.jugem.jp/?eid=251

花鳥風月の科学 松岡正剛
http://tamachan.jugem.jp/?eid=236
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