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デザインは新聞を救えるか?


今年の年初から突然のように始まった紙メディアのシフトチェンジについて、ポスト紙メディアはどんなカタチになるんだろうか?iPadアプリとして登場したReederとか、大本命かもしれないFlipboardとか、いろいろ出てきつつあるし、行き着くところ前述のECサイトくらいのものがウェブマガジンというか電子雑誌のようなものになっているくらいになんなきゃダメでしょと思っているのですが。

そんなこんなと日々模索していくなかで、ああそっか、こういうのもありなのかっていう興味深い事例を見つけた。もう既にある新聞をリノベーションしたような試み。JR九州の車両デザインを20年かけてやってきた水戸岡鋭治さんに近いかもしれない。
ジャチェック・ウツコは問う「デザインは新聞を救えるか?」
speaker:Jacek Utko date:2009.02

新聞は今にも絶えそうです。読者は古い情報にお金を払いたがらず、広告主もそれに従っています。それよりも携帯電話やパソコンの方が、新聞の日曜版よりよっぽど手軽です。さらに森林も保存しなくてはならない。これではどんな産業もダメになってしまうでしょう。ですので「新聞を救う術はあるのか?」と質問を変えるべきです。



新聞の将来についていくつかのシナリオが考えられます ある人は「無料であるべきだ」と言ったり「タブロイド版かもっと小さいA4サイズがいい」「コミュニティごとに発行する地方紙がよい」「小さなビジネスなどニッチを狙うべき」 しかし無料にならずとても高くなってしまう 「新聞は意見主体であるべきだ」「ニュースは少なく、見解を多く」「できれば朝食の時に読みたい」「後の時間は通勤の車の中でラジオを聞くし」「会社ではメールチェック、夜はテレビ」 良さそうに聞こえますが、どれも時間稼ぎにしかなりません 長い目で見たら 新聞が生き残るべき実際的な意味はないと思うからです。

そこで私達に何ができるのでしょう?(笑)私はこうしました。20年前、ボニーエというスウェーデンの出版社が 旧ソ連圏で新聞を始めました。数年後には中央と東ヨーロッパに複数の新聞を発行するようになった。それらは経験の浅いスタッフにより運営され、レイアウトなど見た目を重んじる文化がなく、かける予算もありません 多くの新聞にはアートディレクターすら居ませんでした。私は新聞のアートディレクターになろうと決めました。それ以前私は建築家で、祖母に一度聞かれたことがあります。お前は何で生計を立てているの?私は「新聞のデザインをしているんだ」と答えました 「デザインするものなんてないじゃない。つまらない活字だけ」(笑)彼女は正しかった。私はフラストレーションを貯めていました。



ある日ロンドンに来てシルク・ド・ソレイユのショーを見た時、大発見をしたのです「こいつらは、気味の悪い」「しけた"興行"というものを」「考えられる限り最高の"パフォーマンスアート"に仕立てあげた」だから「つまらない新聞でも同じ事ができるかもしれない!」と思ったのです。そしてその通りにしました。1つ1つデザインし直したのです。1面が我々の特徴となりました。私が読者と近い距離で対話するための私的なチャンネルでした。

ここでチームワークや恊働について話すつもりはありません。私のやり方はとても利己的でした。私はアーティストとして主張がしたかった。私なりの現実の解釈をしたかった。私は新聞ではなく、ポスターが作りたかった。雑誌ですらない、ポスター。我々は文字の見せ方で実験していました。イラストや写真でも、とても楽しかった。それらはすぐに結果をもたらし始めました。ポーランドでは我々の作品は「カバー・オブ・ザ・イヤー」に3年連続選ばれました。ここにある他の例は、ラトビア、リトアニア、エストニア、中央ヨーロッパの国々からのものです。



でもそれは1面だけのことではありませんでした。我々の秘密は、新聞全体を ひとつの作品として扱っていた事。まるで楽曲のように、音楽にはリズムや起伏があります。デザインはこれを読者に体感させる責任があるのです。ページをめくりながら読者は様々なことを感じる。私はその体験に責任を持っているんです。我々は見開き2ページを1つのページと捉えました。読者がそのように捉えるからです。

このロシア語の新聞のページは、スペイン最大の情報グラフィックス大会で多数受賞しましたが、1番の賞はニュースデザイン協会からのものです。ポーランドでこの新聞をデザインし直して1年も経たないうちに、世界一素晴らしいデザインの新聞と謳われたのです。そして2年後には、エストニアの新聞も同じ賞をいただきました。すごくないですか?



もっとすごいのは、これらの新聞の購読数が どんどん増えていったのです。いくつか例を出すと、ロシアでは1年後に11%増。リデザイン3年後には29%増。ポーランドも同様、最初の1年で13%増 3年後には購読数35%アップ。このグラフで見てお分かりの通り、何年もの停滞期のあと、リデザインするや否や 新聞は成長し始めました。でも1番のヒットはブルガリアでした。これはとてもすごかった。

デザインがこれを成し遂げたのでしょうか? デザインはプロセスの一環に過ぎません。我々のとったプロセスは外見を変えるだけではなかった。商品を完全に改良することでした。私は建築における機能と形式の鉄則を、新聞の内容とデザインに応用したのです。その上に戦略をのせました。まず最初に大事なことを考えます。何のためにやるのか?目標はどこにあるのか? そこから内容を調整していきます。その後、大抵2か月後くらいにデザインを始めます。私の上司らは初めはとても驚いていました。ただ原稿を見せるだけでなく、なぜこんな ビジネスみたいな質問をしてくるのだ、と。 でもじきにこれがデザイナーという新たな役割だと気付きました。プロセスの最初から最後まで関わることです。

ここから得られる教訓とはなんでしょう? 最初の教訓は、デザインは商品を変えるだけではなく、ワークフローも変えることができる、というより会社の全てを変えてしまえる。会社をひっくりかえすことができる。あなた自身をも変えてしまえる。誰のせいかって?デザイナーです。デザイナーに権限を与えてください(喝采)でも2つ目の教訓の方がより重要です。皆さんも私のように貧しい国に住み、小さな会社のつまらない部署で働きながら、予算も人材も何も無いところで、それでも自分の仕事を最高のレベルに持っていくことができます。誰でもできることです。必要なのはひらめきと、ビジョンと、決断力だけです。そして、ただ「良い」だけでは足りないと覚えておくことです。

ありがとうございました。

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ジャチェック・ウツコは問う「デザインは新聞を救えるか?」
http://www.ted.com/talks/lang/jpn/jacek_utko_asks_can_design_save_the_newspaper.html

上記プレゼンテーションの映像(再生ボタン右の View subtitles から日本語の字幕を表示できます)
| 情報デザイン・メディアデザイン | 01:13 | comments(1) | - |
初めて読ませてもらいました。
とても考える事があり参考になりました
| iphone小僧 | 2010/09/11 10:09 AM |